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■民の繁栄［民能繁栄・民乃繁栄］★ゆうパック

【判型】半紙本5巻5冊。縦226粍。

【作者】脇坂義堂（矩道・弘道）作。

【年代等】寛政7年冬、鎌田一窓（虚白斎）序。寛政8年春刊。［大阪］以徳舎蔵板、［大阪］吉文字屋市左衛門ほか売出。

【備考】分類「心学」。全冊（見開き図再掲）した。『民の繁栄』は、20部50巻に及ぶ義堂の著作中でも傑作の一つ。鎌田一窓の序文に「此編、初（ハジメ）にはおもしろおかしき寓言の奇談をなして人を誘ひ、終（オワリ）には誠実の諷規をもて人をさとす。亦、人を善にうつらしめんと欲するの術にあらずや」と指摘するように、ある老人が語る様々な奇談・寓話を通じて、知足安分や修身・斉家などの道を平易に諭した道話で、各話の途中と末尾に金言名句や俚諺を鏤める。1巻は、起床時間を間違えて鳴った時計に腹を立てた男が時計に「時知らず」と罵る話から始まる。男が再び眠った夢の中に時計が現れて、「再び寝入る汝こそ時知らずで、これでは一代の時を失うだろう。とかく己の過ちは見えぬもの」と男を諫め、身勝手な山僧の逸話を引いて己の心の狂いを正せと諭し、結びに『古文真宝』の「嗚呼、六国を滅する者六国なり、秦に非ず…」の語を掲げて結ぶ。このほか、強欲な学者と仙人の問答で欲を捨てて心の安楽を得るべきこと、また、虎と蟻の問答で我意をたてず慎むべきことを説く。2巻は、遊女の身受けを望む男が遊女に諭されて目覚め、倹約に務め、家業に粉骨砕身し、1年後に遊女を妻に迎えた話などを通じて家業出精や堪忍（「堪忍箱」については初篇序文参照）を諭す。3巻以降も同趣向の寓話により、人の難儀を顧みること、一心に一事を為すこと、苦楽が己にあること、一事に泥（ナズ）んで元を失わないこと、凡夫の欲の浅ましさ、人の世話をする秘訣、「結構過ぎるが不足の元」たること、道は近きにあること、貧乏を守るべきことなどを説く。

★原装・題簽付・概ね美本。【参考価格（初出品時の相場）：日本の古本屋で、5冊揃いが、42,000円】。