まえがき
家を新築する際, 家族が集って、いろいろと意見を出しあい, 方眼紙の上に線を引いて, 間取りを考えるのは実に楽しいものです。
平屋がよいか、それとも二階建にしようか, 木造にするか、鉄筋コンクリー ト造りにしようか,応接室の広さは,子供室は, 家事室は,セントラルヒーティングを採用しようなどと, あれこれ考える時には夢があり、希望があり,生き甲斐があります。
実際、間取りは建築の基本であり, 生活をきめる原動力なのです。
楽しい住みよい住宅を建てるには, 家族各自の生活を充分に考えた上で、間取りを組立てなければなりません。そうして始めて個性が生かされるのです。これまで多数出版されている住宅の間取り集は,こうした趣旨のもとに書かれているものもあるようですが、残念ながら, そこには大変な間違いがおかされています。
家族各自の生活を充分に考えて,個性が生かされた楽しい住宅をつくるためには、家族の性格や運の消長を知らなければならない筈ですが,それが全く無視されているのが問題なのです。
これまでの間取り集は,設計者の, 「我の表現」 であって,それがどんなに モダンであり、奇抜であり,合理性が追求されたものであっても、所詮,住む家族の運の消長を無視したものといわなければなりません。
巷間, 住宅の間取りについての本は数多く出版されていますが、住む家族に幸運をもたらす吉相の間取り図を公にした本は一冊もありません。
多分, 家相鑑定に従事している方々が, 秘伝と称して秘密にしているためか、或は,素晴しい発展をしているモダン建築と家相との解釈の問題を解決できないためか、相変らずの明治、大正調の間取りしか考えられず,新しい時代についていけないためか、その理由は分りませんが,とに角出版されていないようです。
そういう現状をみるにつけ、正しい家相の立場から、間取り集を公にするこ とによって,吉相住宅の概念をつかんでいただき, 家を新築するときや、増改 築の際の参考にしていただけたらと考えておりました。
たまたま、昨秋、「女性のための家相入門」を出版したところ, 早速, 多大の反響をいただき感謝していますが,その際, 同書巻末の間取り集を、もう少し具体的に、分り易いものにしてはどうかというご要望が多数ありましたのを機会に書いたのが本書です。
前に一寸ふれたように, 家相の立場で間取りを考える時は, 家族の氏名や 年月日,これまで住んでいた住宅の家相などから, 家族の性格や運の消長を鑑定して,次の住宅で吉相のところは取入れ, 凶相のところは補うよう考えるのです。
その上、敷地の形状や方角、多くの希望条件や予算, 建ペイ率なども考慮に入れなければならないので、住む家族によって異り、非常に複雑なのですが、そこには自ら基本線があります。
従って本書では,誰が住んでも永年の間には,次のような状態になるという特質を持った家相を考えてみました。
1 心身共に健康になる
2 経済的に発展する
3 子女が良縁に恵まれる
4 心身障害児が生まれない
5 主人が社会的に活躍でき, 家庭が円満になる
なお,「女性のための家相入門」 で述べたように, 家相を決して平面的に考えてはいけません。
あなたが研究, 検討して考えた間取り図を基本にして, それを如何に立体化するかということも非常に大切です。 そこには, 色彩や照明, インテリアに至るまでの総合的デザインの問題がありますが、短いページ数では解説できないので割愛しました。
共同執筆者の信貴徳三氏は,日本では数少ない優秀な建築デザイナーの一人です。
本書では,私が永年研究の末考案した吉相の間取り図を, 楽しいスケッチと平面図に表現し、解説も加えていただきました。
終わりに,この本のために示された榊原兄妹の熱意と協力に深く感謝します。
昭和44年1月吉日 西納通隆
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