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喜安幸夫★はぐれ同心闇裁き（全12巻・完結）★　二見時代小説文庫

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★商品説明★

喜安幸夫著　「はぐれ同心闇裁き（全12巻・完結）」　二見時代小説文庫

　「はぐれ同心闇裁き　龍之介江戸草紙」　　　　２０１０年　６月　文庫初版
　「隠れ刃　はぐれ同心闇裁き２」　　　　　　　２０１０年　８月　文庫初版
　「因果の棺桶　はぐれ同心闇裁き３」　　　　　２０１１年　１月　文庫初版
　「老中の迷走　はぐれ同心闇裁き４」　　　　　２０１１年　６月　文庫初版
　「斬り込み　はぐれ同心闇裁き５」　　　　　　２０１１年　１０月　文庫初版
　「槍突き無宿　はぐれ同心闇裁き６」　　　　　２０１２年　２月　文庫初版
　「口封じ　はぐれ同心闇裁き７」　　　　　　　２０１２年　７月　文庫初版
　「強請の代償　はぐれ同心闇裁き８」　　　　　２０１２年　１１月　文庫初版
　「追われ者　はぐれ同心闇裁き９」　　　　　　２０１３年　３月　文庫初版
　「さむらい博徒　はぐれ同心闇裁き１０」　　　２０１３年　７月　文庫初版
　「許せぬ所業　はぐれ同心闇裁き１１」　　　　２０１３年　１１月　文庫初版
　「最後の戦い　はぐれ同心闇裁き１２」　　　　２０１４年　５月　文庫初版

　　　　　　定価　　　　各巻　６４８円＋税　　２９２頁～３０３頁

★著者略歴★

　１９４４年、兵庫県姫路市出身。現在埼玉県新座市在住。国士館大学政経学部卒。１９７２年中華民国国立台湾大学政治研究所終了・帰国。１９９８年「台湾の歴史」で第７回文芸家クラブ賞。２０００年「はだしの小源太」などで第３０回池内祥三文学奨励賞受賞。「大江戸番太郎」シリーズなどが人気。”仇討”を題材にした物語が好きらしい。

★作品内容★

　田沼時代の終わりのころを舞台に、田沼意次の隠し子で町人として無頼の日々を過ごしていたが、母の死後、御家人株を譲り受け同心になった異色の主人公を主役にしたシリーズ。全12巻・完結。田沼意次と松平定信いろいろな時代小説に登場するが、見方によってとらえ方は様々。
　＜１＞　父親を知らず町人として無頼の日々を送っていた龍之介。ただ、母の実家は裕福な商家だったし、母は武家としてのたしなみや武道を習わせる。二十歳を過ぎ道場の師範代までなったが、街道筋でもめ事があると飛び出して叩きのめす日々が続いていた。母の死後、道場主から本当の父の正体と母が龍之介のために同心株を買っていてくれたことを知る。それから3年、北町奉行同心として目立たぬようにして暮らしていたが、ある日裁許の場で目にしたのは、かつて町場で子分のように従っていた左源太の姿。賭場の喧嘩に巻き込まれて遠島を言い渡される。その成り行きに不審を覚えた龍之介は、背後を調べ始める。第1話から３話は、竜之介の出自の紹介や仲間となる左源太、お甲、そして門前町の闇の親分などとのつながりなどシリーズの準備段階と言える。その中で、奉行所内で闇を支配しようとする隠密同心と与力を始末することになる。第4話から本格的に田沼と時代を背景にしたシリーズに突入。田沼を引きずり下ろしたい定信は、家臣に命じて打ちこわしを起こそうとしていた。それを阻止した左源太が目にしたのはその家臣の姿。
　＜２＞　第1話、前巻最後で左源太が目にしたのは13年前に母を殺した侍たちだった。龍之介とお甲は賭場の親分たちと協力して左源太の仇討を手伝う。新米のくせに取り締まりが難しいという門前町を無難にこなす龍之介に同僚たちは首をひねる。ともかく、10代将軍が病に倒れ、田沼意次の足元が揺らぐ中で、松平定信との関係は。足元が揺らいだ意次を失脚に追い込もうと資格を送り込んだり、女掏摸を利用して田沼の家臣に町場で問題を起こさせようとする。失敗するとその口封じをしようとする松平の家臣たちに、龍之介達は。
　＜３＞　ついに10代将軍が亡くなり後ろ盾を失った意次は老中を引退、代わりに老中になったのは松平定信。意次は龍之介に”血筋を隠せ”という。1・2編では死が近い老婆が、息子たちに残すため、棺桶に入って門前で哀願を乞い、喜捨を求めていた。同情した龍之介たちは陰から助けてやるが、松平家の者が見張っている。老婆が口にした”世が世なれば”という言葉から、田沼の血筋ではないかと疑ったのだ。老婆が亡くなり、残された兄妹を松平の手から逃がすために工夫を凝らす龍之介たち。前篇で失敗した松平家の中間が、上司に厄介払いされようとするのを哀れに思った龍之介。そんな時5年前に江戸を逃げた盗賊が戻ってきた。松平家に不満を持つ中間に近づき、松平家出入りの献残屋に押し込みを働こうとする。
　＜４＞　前巻の始末で、松平家に恩を売り名前を知られることになった龍之介、松平家に頼られて意次の隠し子を探すことになる。龍之介こそその人物なのに。第1・2話では、田沼の引き立てで老中になった沼津藩水野を失脚させようと、天明の飢饉で直訴に来た農民を利用とする定信、事が起こる前に殺そうとする水野。二つの藩に対抗して、農民を守る龍之介。後半は、”高貴の出”と名乗る修験者を追う松平家。そのしつこさが際立つが、自分のことと思い合わせ、絶対守りきると思う龍之介。町の仕切る男たちも同じ思いだ。松平家に食い込んだ龍之介はそれをうまく利用して、修験者を逃がす。定信は老中になるが、この物語では悪役を割り振られている。事実、名君との評判の裏側で、天明の飢饉で藩内で餓死者を出さなかったのは、近隣から米を買い占めたためで、そのせいで近隣の被害を多くした。正しいことと思いこむと執拗に突進する自己中の性格。
　＜５＞　神明町の茶屋の向かいにある水茶屋の実態は岡場所だったがその女郎に二人の男が通いつめていた。一人は松平定信の家臣、もう一人は沼津藩水野家の家臣。あ店に血が上った二人がぶつかれば、街道は大騒ぎになる。謹厳実直を旨とする定信は、家臣を捕らえて始末することを龍之介に依頼してくる。田沼を追い落とした定信も憎いし、また意次に引き立てられたのに今は定信にすり寄る水野も好ましくはないが、町中で面倒を起こされないよう、そして町人をないがしろにする武家のやり方にも反感を持つ龍之介が、どういう始末をつけるのか。
　＜６＞　1・2話は、最近世を騒がせる辻切りの始末。飢饉や定信の苛烈な政策に反抗辻斬りや槍突きが江戸に出没。槍突きは飢饉で田舎から出てきた男の犯行。辻斬りは定信に取り潰された田沼家の元藩士が行っていた。定信は田沼追い落としのために生きたまま捕らえるように命じる。第3話では、物語の転換点になる意次の死。その臨終の場面が描かれる。第4話では老中首座になった定信の苛烈な対策と飢饉で江戸に出てきた田舎の青年たち。賭場を舞台にやり取りが行われる。
　＜７＞　龍之介の見回りうちの増上寺門前で起こる事件。定信は抜け荷を取り締まろうと南町の隠密同心に役中頼みをした。変装して主風の男をつけている隠密同心を見かけた龍之介はそこから抜け荷の探索をしていることを知る。その店は龍之介に見回りうちにあり、回線問屋や献残屋、そして増上寺の門前のやくざの貸元までつながっていた。定信が手を入れる前に龍之介の手で穏便に解決する方法を探り、地方と協力して先に打ち込みして首魁を捕らえることにする。その作戦は成功するのだが、定信が役中頼みとして隠密同心に送ったものの中に抜け荷の高麗人参が含まれていた。定信は自分に傷がつかないように隠密同心とのことはなかったことにしようとする。これには龍之介も怒る。
　＜８＞　実直そうな店の主が牢屋同心を襲おうとして大松の子分らに取り押さえられる。龍之介はわけを聞き、相手の牢屋同心を探るがこれもそんなに悪事を働くようにも見えない。実は妾とその娘が、二人を騙して金を得ようとしていたのだ。まあどっちもどっちということで納めたのだが、妾の娘おマキは武家奉公することになったというのだが、その相手が松平定信の高禄の家臣であった。おりしも定信は、売女や妾を取り締まろうとしていた。またしても定信の身勝手な謹言実直によって粛清がなされる。
　＜９＞　またしても松平定信の家臣による事件。浜松町に妾を囲っていた男が最近の定信の様子を見て、ばれれば切腹と思い、先に妾を殺してしまおうとする。前回の事件より悪質なのは単純に妾を殺せばばれ易いと、先に夜鷹を殺して連続殺人に見せかけようとしたことだ。そのせいで増上寺の門前町で夜鷹が一人殺される。事件は無かったことにされるが、仲間の夜鷹の敵討ちを手助けする龍之介。それにしても定信の寛政の改革は厳しくなるばかり。今度は娘義太夫や占い師まで取り締まろうとする。龍之介の町回りの神明寓に娘義太夫たちが大挙して助けを求めてきた。それにしても定信は執念深い。自分の名誉を守るためならば関係者をすべてなきものとしようとする。物語でこんなやり方が長く続くはずがないと語られるように、5年で定信は老中を退くことになる。
　＜１０＞　松平定信の締め付けは厳しくなるばかり、ところが定信肝いりで奉行所が動いた賭場の手入れが3度も続いて空振りに終わる。奉行所内部での密告は無さそうなので、松平定信の家中で情報を流している者がいるのではないか。そんな時神明町の賭場にも妖しい侍が訪れ、翌朝土左衛門となった姿が発見される。最初は痛い腹を探られていた水野藩の仕業かと思ったが、その横目に聞くと、自分がやる前に仲間のようなものが殺したといっていた。いつものように白河藩から役中頼みが龍之介に来る。すでに龍之介は白河藩内部の者の仕業と知りながら、とぼけて引き受ける。白河藩の横目付が自ら賭場を開き、手入れの情報も流していたのだ。すでに、定信の施策には家中からもほころびが出てきていたのだ。これをどう利用し、始末するか。
　＜１１＞　今回定信が出した禁止令は、枕絵や好色本の禁止。ただその範囲が明らかになっていないので、結構忖度が働くが、ともかくその禁止令が出る前に、大量に仕入れて闇で売って儲けようとしたものがいた。それも、龍之介の足元で、明らかに情報を売って儲けようとした定信の家臣がいたのだが、それは、龍之介の出自に迫っていた男でもあった。どちらにしてもこれを消さねばならない、処のやくざと組んだその男を探索中の殉職と見せかけて葬ることにしたのだが、その前に邪魔になったその男をヤクザが葬る。どうやって、この後始末をつけようか。
　＜１２＞　ついにシリーズ完結。松平定信の失脚の原因は様々いわれるが、龍之介との戦いも決着がつく。ついには湯屋の混浴を禁止令が出る。確かに混浴は問題があったが、それが今までの常識。それまで禁じて、さらに女髪結いの禁止まで出すころには、定信の改革の末が見えてきた。確かに質素倹約・綱紀粛正が改革の終焉で行われてきたが、どうして失敗したのかといえば、改革の主導者が将軍でなかったこと。将軍だから大奥まで改革できたが、最大の浪費は大奥にあり、それに手を付けた者は結局、失脚したのだ。それはともかく、今回の物語では市井の常識的なものまで禁じて行った定信の失脚が語られる。

　　状　態

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