F3548 売切！序章：色褪せた日常と運命の輝き婚約ピアスにも！美しいシャンパンカラーD１.００ct K18無垢ピアス 1.0G 19.24x10.79mm 新品拍卖-51maijp【ymi.cn】

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F3548 売切！序章：色褪せた日常と運命の輝き婚約ピアスにも！美しいシャンパンカラーD１.００ct K18無垢ピアス 1.0G 19.24x10.79mm 新品

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F3548 売切！序章：色褪せた日常と運命の輝き婚約ピアスにも！美しいシャンパンカラーD１.００ct K18無垢ピアス 1.0G 19.24x10.79mm 新品: 商品编号：p1206026850 【浏览原始网页】

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以下、所謂ブラクラ妄想ショートショートです～～

F3548 婚約の輝きは、時を超えて

序章：色褪せた日常と運命の輝き

大阪、南船場。石畳が続くお洒落な街並みの一角に、アンティーク調の扉が印象的なジュエリーショップ「ブランドクラブ」はひっそりと佇んでいた。斎藤美咲（さいとうみさき）、三十歳、独身。中堅商社で営業事務として働く彼女の毎日は、まるで精度の高い時計のように正確で、そして同じリズムを延々と刻み続けていた。朝は満員電車に揺られ、日中は鳴り響く電話とパソコンのモニターに映る無数の数字と格闘し、夜はコンビニ弁当を片手に、誰もいない部屋の明かりを灯す。

若い頃は、夢も恋も、それなりに経験してきたはずだった。キラキラした未来を信じて疑わなかった。しかし、三十路を迎え、気づけば心はすっかり乾ききっていた。友人たちのSNSには、結婚式の写真や生まれたばかりの赤ちゃんの笑顔が溢れている。「おめでとう」と心無いスタンプを送りながら、胸の奥がチクリと痛む。それは嫉妬というよりも、取り残されたような焦燥感と、自分の人生がこのまま何も起こらずに終わっていくのではないかという、漠然とした恐怖だった。

「斎藤さん、これ、来週の会議資料。悪いけど金曜までにお願いできる？」
「はい、課長」
「あ、それと、来月の鈴木さんの送別会、幹事お願いね。寿退社だから、盛大にやってあげて」

寿退社。その言葉が、美咲の心に重くのしかかる。自分より五つも年下の鈴木さんが掴んだ幸せ。素直に祝福できない自分が醜くて、美咲は唇を噛み締めた。私の人生の歯車は、どこで狂ってしまったのだろう。

その日、珍しく定時で会社を出た美咲は、無意識に南船場の街を彷徨っていた。目的もなく歩く彼女の足を止めたのが、「ブランドクラブ」のショーウィンドウだった。並べられたきらびやかなジュエリーには目もくれず、彼女の視線はただ一点に釘付けになった。

それは、一対の小さなピアスだった。

柔らかな三角形のK18ゴールドの台座に、シャンパンカラーのダイヤモンドが無数に敷き詰められている。パヴェセッティングというのだろうか。一つ一つの石は小さいのに、集まることで、まるで夕暮れ時の優しい陽光をそのまま結晶にしたような、温かくもどこか切ない、不思議な輝きを放っていた。派手さはない。けれど、一度見たら忘れられない、奥深い魅力があった。

添えられたプライスカードには、無機質な型番と説明書きが添えられていた。

『F3548 婚約ジュエリーにも！美しいシャンパンカラーダイヤモンド１.００ct 最高級K18無垢ピアス』

婚約。今の自分には、SF映画のタイトルよりも縁遠い言葉だ。自嘲気味に口元が歪む。それでも、美咲はそのピアスから目が離せなかった。まるで、ダイヤモンドの粒の一つ一つが意思を持っているかのように、「大丈夫、あなたは一人じゃない」と囁きかけてくる気がした。疲弊しきった心が、その温かい光にじんわりと溶かされていくのを感じる。

気づけば、美咲は店の重厚な扉を押していた。カラン、とドアベルが鳴る。上品な初老の男性店主が、穏やかな笑みで迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。何かお探しでございますか？」
「あ…あの、ウィンドウにあった、三角形のピアスを…」

店主は心得たように頷き、ビロードのトレイにピアスを乗せて差し出した。実物を間近で見ると、その輝きはさらに深みを増した。指先に伝わる、確かな金の重みと、ダイヤモンドのひんやりとした感触。美咲は、まるで魔法にかけられたように、それを自分の耳たぶに当ててみた。

その瞬間だった。

世界がぐにゃりと歪み、視界がシャンパンカラーの光で満たされた。店主の声も、街の喧騒も、急速に遠のいていく。ダイヤモンドの温かい光が、まるで優しい毛布のように全身を包み込み、意識がゆっくりと沈んでいく。まずい、貧血かもしれない。そう思ったのが最後だった。

「お客様？お客様、しっかり！」

心配そうな店主の声が、まるで深い水の底から聞こえるようにくぐもって響く。大丈夫です、と答えようとしたが、声が出ない。力が抜けた手からピアスが滑り落ち、トレイの上でカリン、と乾いた音を立てた。それが、斎藤美咲が現代日本で聞いた、最後の音になった。

第一章：目覚めと戸惑いの公爵令嬢

意識が浮上した時、最初に感じたのは、ふわりと身体を包む、上質なシルクの感触だった。次に、微かに香る、嗅いだことのない甘い花の香り。重い瞼をこじ開けると、目に飛び込んできたのは、見慣れたワンルームの殺風景な天井ではなかった。

精緻な彫刻が施された、豪奢な天蓋。ふかふかの羽毛布団。そして、アーチ状の高い窓から差し込む柔らかな光が、部屋の隅々までを照らし出している。壁には美しい風景画が飾られ、マホガニーの家具はどれも一級品だと一目でわかった。

「…どこ、ここ…？」

掠れた声は、自分のものなのにどこか違う響きを持っていた。混乱する頭で体を起こそうとして、美咲はさらなる異変に気づく。シーツから覗く自分の腕は、日に焼けた健康的な肌ではなく、まるで陶器のように透き通るほど白く、驚くほど華奢だった。指も、細く長い。そして、肩にかかる髪に触れて、息を呑んだ。腰まで届くほど長く、月光を溶かしたかのように艶やかな、銀色の髪。

何が起きているの？夢？それとも、あの店で倒れた後、誰かが手の込んだ悪戯でも…？

よろめきながらベッドを降り、部屋の隅に置かれた大きな姿見の前に立った美咲は、そこに映る姿を見て絶句した。

そこにいたのは、斎藤美咲ではなかった。大きなアメジスト色の瞳、小さな鼻梁、桜色の唇。まるでおとぎ話に出てくるお姫様のような、儚げで絶世の美少女。年は、十代後半といったところだろうか。見知らぬ少女が、美咲と同じように驚愕の表情で、こちらを見つめ返している。

「嘘…でしょ…？」

呆然と呟いたその時、コンコン、と控えめなノックの音がして、重厚な扉が開かれた。

「セラフィナお嬢様、お目覚めですか！よかった…旦那様も心配なさっておりましたのよ」

入ってきたのは、フリルのついたエプロンドレスを身にまとった、メイドらしき若い女性だった。彼女は美咲、いや、鏡の中の少女の姿を見て、心から安堵したように胸を撫で下ろしている。

セラフィナ？それが、この身体の名前らしい。
「あなたは…？」
「まあ、お嬢様？わたくしです、マーサですわ。高熱でうなされて、記憶が混乱していらっしゃるのですね…」

マーサと名乗るメイドの話を、要領を得ないまま聞いているうちに、美咲はこの信じられない状況を少しずつ理解していった。

ここは、魔法と貴族が存在する異世界、アステル王国。そして、この身体の持ち主は「セラフィナ・ド・ロレンツィ」。由緒あるロレンツィ公爵家のただ一人の令嬢。しかし、彼女は生まれつき病弱で、極度に内気な性格のため、社交界ではまともに会話もできず、「物言わぬ人形」「ロレンツィ家の置物」と陰で揶揄されている存在だった。そして一週間前、高熱を出して倒れ、ずっと意識が戻らなかったのだという。

さらに、セラフィナには、この国で最も権勢を誇る若き公爵、カイラン・フォン・アークライトとの婚約が決まっていた。それはロレンツィ家の地位を安泰にするための、完全な政略結婚。愛など、そこには一片も存在しない。

「そんな…異世界転生なんて、小説だけの話じゃ…」

あまりにも現実離れした筋書きに、美咲は眩暈を覚えた。元の世界に帰りたい。あの単調でも、慣れ親しんだ日常に。でも、帰る方法は皆目見当もつかない。途方に暮れ、ベッドサイドのテーブルにへたり込んだ彼女の目に、ふと、螺鈿細工の施された小さな宝石箱が留まった。

何かに導かれるように、そっと蓋を開ける。その瞬間、美咲は息を呑んだ。

そこには、信じられないものが入っていた。南船場の「ブランドクラブ」で見た、あのシャンパンカラーのダイヤモンドのピアス。なぜ、これがこの世界に？

震える指でピアスに触れた、その時だった。

脳内に、無数の映像と感情が、まるで濁流のように流れ込んできた。それは、この身体の本当の持ち主である「セラフィナ」の記憶だった。

冷たい瞳で自分を「駒」としか見ていない父親。婚約者であるカイラン公爵からの、あからさまな無関心と侮蔑。夜会で聞こえてくる、「あんな陰気な方が公爵夫人になるなんて」という嘲笑と陰口。誰にも理解されず、愛されず、ただ一人、広すぎる屋敷で孤独に耐える日々。絶望の中で、彼女の心は静かに壊れていったのだ。そして、倒れる直前、彼女はこのピアスを握りしめ、心の底から強く、強く願っていた。

『もう、消えてしまいたい。誰か、私じゃない誰かになって…』

「…そう。あなたは、もうここにいたくなかったのね…」

美咲の頬を、一筋の涙が伝った。それは、セラフィナの悲しみと絶望が、時空を超えて流れ込んできた涙だった。そして悟った。自分は、彼女の最後の、命をかけた願いに引き寄せられるように、この世界に呼ばれてしまったのだと。

逃げることはできない。元の世界に帰る方法もわからない。ならば。

美咲は、鏡の中の美しい少女の瞳を、まっすぐに見つめ返した。

「わかったわ、セラフィナ。あなたの人生、無駄にはしない。あなたが諦めた人生、私があなたの身体で生きてあげる。そして、あなたの代わりに、絶対に幸せになってみせる」

それは、三十年間、自分の人生を諦めかけていた斎藤美咲が、初めて自分の意志で下した、力強い決意だった。彼女はピアスを手に取り、そっと自分の耳につけた。シャンパンカラーのダイヤモンドが、彼女の決意に応えるかのように、窓から差し込む光を反射して、力強い輝きを放った。

事務職で培った忍耐力、問題解決能力、そして理不尽な人間関係を乗り切ってきた処世術。それが、この異世界で戦うための、今の彼女の唯一の武器だった。美咲改め「セラフィナ」の、二度目の人生を懸けた戦いが、今、静かに幕を開けた。

https://youtu.be/Mi9uNu35Gmk?si=fa7JyCiYWalsu34E

第二章：氷の公爵と燃える嫉妬

体調が回復したセラフィナは、数日後、婚約者であるカイラン・フォン・アークライト公爵と、事故後初めて公式に顔を合わせることになった。謁見室に現れた彼は、まさに「氷の公爵」の異名にふさわしい、人を寄せ付けない冷気をまとった青年だった。

https://youtu.be/a2GujJZfXpg?si=aUdWvKgJt_riUi0w

夜色の髪に、彫刻のように端正な顔立ち。だが、そのサファイアのような青い瞳は、絶対零度の光を宿し、何の感情も映し出してはいない。彼はセラフィナを一瞥すると、まるで道端の石でも見るかのような無感動な声で言った。

「体調は回復したようだな、セラフィナ嬢。だが、無意味な騒ぎを起こして周囲を煩わせるのは、今後慎んでもらいたい。アークライト公爵家の名を汚すような真似は許さん」

その言葉には、婚約者に対する気遣いや優しさなど微塵も感じられなかった。あるのは、ただ責務と、セラフィナを政略の道具としか見ていないという冷徹な事実だけ。以前のセラフィナなら、この圧倒的な威圧感と冷たい言葉に怯え、震えながら俯いていただろう。だが、今の彼女の中身は、数々の理不尽な上司の叱責にも「申し訳ありません」と笑顔で対応してきた、鋼のメンタルを持つ斎藤美咲だ。

セラフィナは、背筋をすっと伸ばし、優雅にカーテシーをしてみせた。そして、顔を上げ、カイランの青い瞳をまっすぐに見つめ返す。

「ご心配には及びませんわ、カイラン公爵様。わたくしはただ、これからの人生をどう生きるべきか、この機会に少しだけ深く考えていただけですもの。無意味な時間ではございませんでしたわ」

凛として、はっきりと。そして、口元には貴族令嬢らしい、完璧な微笑みを浮かべて。

その予想外の返答に、カイランの眉が僅かに動いた。彼が知るセラフィナは、いつも怯えた小動物のように視線を彷徨わせ、かろうじて挨拶の言葉を口にするのが精一杯の、意思のない人形だったはずだ。

「…ほう。人形がお喋りになったか。それとも、高熱で頭でもおかしくなったか」
「おかげさまで、視界が晴れたような気分ですわ。これまでは霧の中にいたようでしたけれど」

皮肉めいたカイランの言葉にも、セラフィナは動じない。むしろ、その言葉を逆手に取り、自分の変化を肯定してみせた。カイランは初めて、目の前の婚約者を「観察」した。以前の彼女には感じられなかった、強い意志の光がそのアメジストの瞳に宿っている。それは、彼にとって全く未知のセラフィナだった。彼の青い瞳の奥に、初めて「興味」という微かな色の光が灯ったことに、セラフィナは気づいていた。

しかし、その小さな変化は、別の人物に黒く渦巻く感情を抱かせるには十分すぎた。

伯爵令嬢、イゾルデ・ヴァレンティ。燃えるような赤い髪と、猫のように気まぐれな緑の瞳を持つ、社交界の華。彼女は長年、カイラン公爵に熱烈な想いを寄せており、その家柄と美貌から、誰もが彼女こそが未来の公爵夫人になるだろうと噂していた。それなのに、突如として現れた格下のロレンツィ家の娘にその座を奪われたのだ。彼女のプライドは深く傷つけられ、その怒りと憎悪の矛先は、すべてセラフィナに向けられていた。

病弱で気弱なセラフィナを言葉巧みに追い詰め、心を衰弱させてきた張本人が、このイゾルデだった。

数日後に開かれた王妃主催の茶会で、イゾルдеは早速セラフィナに絡んできた。取り巻きの令嬢たちを引き連れ、扇で口元を隠しながら、ねっとりとした甘い声で話しかける。

「まあ、セラフィナ様。あんなに儚げで、今にも消えてしまいそうにいらしたのに、随分とお元気になられたのね。何か悪いものでも召し上がったのかしら？それとも、ようやく公爵夫人の座の重みに気づいて、欲が出てきたのかしら？」

周囲の令嬢たちが、くすくすと意地の悪い笑い声を漏らす。これが、以前のセラフィナが耐えてきた日常だったのだ。心を殺し、ただ時間が過ぎるのを待つだけの、地獄のような時間。

しかし、今のセラフィナは違う。彼女は優雅にお茶を一口飲むと、にっこりと微笑んでイゾルデを見返した。

「ごきげんよう、イゾルデ様。ええ、おかげさまで。毒にも薬にもならないような味気ないお茶を飲み続ける人生より、少しくらい刺激的なスパイスが効いている方が、わたくしの性に合っているようですわ。それに、欲ではなく、責任と申しますのよ。わたくしが立つべき場所の、ね」

そして、イゾルデが何か言い返す前に、すっと立ち上がり、彼女の耳元で囁いた。その声は、他の誰にも聞こえないほど小さく、しかし氷のように冷たかった。

「それから、イゾルデ様。わたくしはもう、貴女様のつまらない嫌がらせに心を痛めて、貴重な時間を浪費するほど、暇ではありませんの。もっと有意義なことに頭を使いたいの。お分かり？」

イゾルデの顔が、怒りと屈辱で朱に染まっていく。まさか、あの物言わぬ人形だったセラフィナに、ここまであからさまに反撃されるとは夢にも思わなかったのだ。彼女が言葉を失っている間に、セラフィナは再び完璧な淑女の笑みを浮かべ、その場をすっと離れていった。

セラフィナの毅然とした態度は、その場にいた他の貴族たちの評価を、少しずつではあるが確実に変え始めていた。「ロレンツィ家の置物」ではなかったのか？あのイゾルデ様を言い負かすとは。そして、その噂は、カイラン公爵の耳にも届いていた。

彼は、セラフィナという女性が、もはや自分が知る「人形」ではないことを認めざるを得なかった。彼女が時折見せる、現代的な知識に基づいた的確な意見（例えば、領地の治水問題について、複数の貯水池を段階的に設置する案を口にした時）。困っている使用人に、貴族の垣根を越えてそっと手を差し伸べる優しさ。そして何より、困難や悪意に臆することなく、まっすぐ前を見据える強い瞳。

カイランは、自分がセラフィナという女性を、生まれて初めて「一人の人間」として認識していることに気づき、これまで感じたことのない戸惑いを覚えていた。この感情は、一体何なのだろうか、と。

第三章：ピアスの秘密と温かい騎士

貴族社会での新たな人間関係に戸惑いながらも、セラフィナにはこの世界で唯一、心から安らげる存在ができていた。ロレンツィ公爵家に長年仕える騎士団の若き副団長、リアム・オーウェン。陽光を思わせる金色の髪と、誠実な人柄がにじみ出る穏やかなヘーゼルの瞳を持つ彼は、以前のセラフィナが、誰にも言えずに淡い想いを寄せていた唯一の相手だった。

リアムは、セラフィナの変化を誰よりも敏感に感じ取り、そして、それを静かに受け入れてくれていた。

「お嬢様…最近、本当に変わられました。まるで、嵐の後の澄み切った空のように、強く、なられた」

中庭で剣の稽古をしていたリアムの隣に座り、セラフィナは思わず尋ねた。
「前の私は、そんなに弱かったかしら？」
リアムは少し考えるように視線を彷徨わせた後、優しい声で答えた。
「…いいえ。以前のお嬢様は、お優しすぎたのです。ご自分のことよりも、常に誰かのことを案じておられた。その類まれな優しさが、心無い者たちには、残念ながら弱さとしか映らなかったのでしょう。俺は…俺だけは、ずっとお嬢様の本当のお姿を見ておりました」

その言葉に、セラフィナは胸を突かれた。彼女は、ただ気弱だったわけではない。深い共感性と優しさを持っていたのだ。その繊細すぎる心が、この策略渦巻く過酷な貴族社会で、彼女自身を蝕んでしまったのかもしれない。

「リアム、お願いがあるの。このピアスについて、何か調べてほしいの」

セラフィナは耳元で輝くシャンパンダイヤモンドのピアスを指差した。メイドのマーサから、このピアスはロレンツィ家に代々伝わるもので、ただの装飾品ではないという言い伝えがあると聞いていたのだ。

忠実なリアムは、公爵家の書庫に籠り、古びた文献を何日もかけて調べ、そして驚くべき事実を突き止めてセラフィナに報告した。

「お嬢様、見つけました。そのピアスは、初代公爵夫人が身につけていたもので、『真実の光（ルクス・ヴェリタス）』と呼ばれています。言い伝えによれば、持ち主の強い想いに呼応して、隠された真実や人の心の奥底を照らし出す、魔法の力が宿っていると…そして、信じがたいことですが、古文書にはこうも記されていました。その力を最大限に引き出せるのは、星の巡り合わせにより、異世界より訪れし魂を持つ者だけだ、と」

「異世界からの魂…」

セラフィナ（美咲）は息をのんだ。やはり、このピアスが自分をこの世界に呼んだのだ。そして、本来のセラフィナは、その力を無意識のうちに使い、耐え難い絶望から逃れるために「別の誰か」、つまり自分を呼び寄せてしまったのだ。

その夜、セラフィナは書斎で、父であるロレンツィ公爵が執事と話しているのを偶然聞いてしまった。カイラン公爵が治めるアークライト領の隣接地域から、領民の窮状を訴える匿名の陳情書が届いたらしい。カイラン公爵の任命した代官が重税を課し、私腹を肥やしているという告発だった。しかし、ロレンツィ公爵は「下手にアークライト家の内政に口を挟み、睨まれては我が家の存続が危うい。この件は黙殺する」と言い放ち、陳情書を暖炉に捨てようとしていた。

「お父様、お待ちください！」

セラフィナは思わず書斎に飛び込み、声を上げた。一介の事務員だった美咲にとって、弱い立場の人々が見て見ぬふりをされることは、我慢ならなかった。
「なんだ、セラフィナか。お前が口を出すことではない。下がっていろ！」
「いいえ、下がりません！そこに書かれているのは、生身の人間の苦しみです！それを見捨てるなど、貴族の義務を放棄するのと同じではありませんか！」

セラフィナが、か弱い声でしか話せなかった娘が、涙ながらに必死で訴える。その強い想いに呼応したのだろう。彼女の耳元のピアスが、じわりと熱を帯び、次の瞬間、まばゆいシャンパンカラーの光を放った。

光は、父の手にある陳情書をまっすぐに照らし出す。すると、そこに書かれたインクの文字が、まるでスクリーンに映し出された映像のように、宙に立体的に浮かび上がったのだ。日照りでひび割れた大地、痩せこけた子供を抱きしめる母親の姿、鞭を振るいながら高笑いする代官の憎々しい顔、そして民のなけなしの金で開かれる豪華な宴…。その悲惨な光景が、音や匂いまで伴って、リアルに目の前に繰り広げられた。

「な…なんだ、これは！？この魔法は…！？」

ロレンツィ公爵は腰を抜かし、その場にへたり込んだ。これが「真実の光」の力。セラフィナは確信した。この力を使えば、声なき人々の声を届けることができる。この腐敗した世界を、少しでも良い場所に変えられるかもしれない。そして、それがきっと、優しすぎた本来のセラフィナの、心の底からの本当の願いだったのだと。

https://youtu.be/VyvhvlYvRnc?si=qcV3Fh63_fVPy4VG

第四章：仮面舞踏会の罠と真実の愛

陳情書の一件は、カイランの耳にも入った。ロレンツィ公爵から恐る恐る報告を受けた彼は、セラフィナが起こしたという奇跡のような現象に半信半疑ながらも、すぐに領地の内部調査を命じた。結果は、陳情書の通りだった。彼は即座に悪代官を更迭し、領民の救済に乗り出した。

この事件をきっかけに、カイランのセラフィナに対する見方は決定的に変わった。彼はセラフィナを自邸の書斎に招き、自らが進めようとしている貴族制度の改革について、初めて他人に打ち明けた。

「私は、形骸化した今の貴族社会を憂いている。民の上に立つ者としての責務を忘れ、私利私欲に走る者が多すぎる。法を変え、この国を根底から立て直したいと思っている。だが、私のやり方は急進的だと、敵も多い」
「カイラン様…」
「君のあの力…そして、君自身の視点は、私の助けになるかもしれない。セラフィナ嬢、君は、ただの飾りの婚約者ではない。私の、パートナーになってくれるか？」

それは、初めて彼がセラフィナを、一人の人間として、対等な存在として認めた瞬間だった。最初は政略の道具としか見ていなかった婚約者が、今や彼の孤独な戦いにおける、唯一の理解者となりつつあった。二人の間には、確かに穏やかで、信頼に満ちた時間が流れ始めていた。カイランの氷の仮面が、セラフィナの前でだけ、少しずつ溶けていくのを彼女は感じていた。彼もまた、公爵という重圧と孤独の中で、必死に戦っていたのだ。

しかし、二人の急速な接近を、イゾルデが見逃すはずがなかった。嫉妬の炎に身を焼かれた彼女は、王宮で開かれる仮面舞踏会で、セラフィナを社会的に抹殺するための、最後の狡猾な罠を仕掛ける。

イゾルデは、カイランに敵対する反王政派の筆頭、マルケス辺境伯と裏で手を組んだ。そして、カイランの筆跡を真似た偽の手紙でセラフィナを人気の無い西のバルコニーへ呼び出し、そこで待っていたマルケス辺境伯と密会しているかのように見せかけ、その現場をカイラン自身に目撃させようと企んだのだ。反逆者との密会。それは、アークライト家との婚約破棄、そしてロレンツィ家の没落を意味する、致命的なスキャンダルだった。

カイランからの呼び出しだと信じ込んだセラフィナが、仮面で顔を隠し、指定されたバルコニーへ向かうと、そこには見知らぬ壮年の男が待っていた。
「あなたがセラフィナ嬢ですな。イゾルデ様からお話は伺っております。さあ、こちらへ」
男が下卑た笑みを浮かべ、セラフィナの腕を乱暴に掴んだ、その瞬間だった。

「その汚い手を彼女から離せ」

地を這うような低い、怒りに満ちた声が響き渡った。バルコニーの入り口には、氷の仮面をつけたカイランが立っていた。彼の背後には、計画通り事が進んでいると信じ、ほくそ笑むイゾルデの姿がある。
「カイラン様！ご覧くださいまし！わたくしの言った通り、セラフィナ様が、反逆者であるマルケス辺境伯とこのような場所で密会を…！」

イゾルデが勝ち誇ったように、芝居がかった声で叫ぶ。さあ、この女を断罪なさい、と。だが、カイランのサファイアの瞳から放たれる冷たい視線は、セラフィナでも、マルケス辺境伯でもなく、ただ一点、イゾルデに向けられていた。

「茶番は終わりだ、イゾルデ・ヴァレンティ。君のその浅はかな企みは、すべてお見通しだ」
「な…ぜ…。どうして、この女を信じるのです！？」

カイランは、静かに、だがはっきりと告げた。
「信じる？違うな。私は、知っているだけだ。彼女が、私の知らないところで、私を裏切るような真似は決してしないと。そして、彼女が私以外の男に、あんなにも心を許した柔らかな笑みを向けるはずがないということもな」

それは、理屈ではなかった。この数ヶ月、共に過ごす中で彼の中に確かに芽生え、育ってきたセラフィナへの確かな想い、絶対的な信頼が、そう告げていたのだ。

追い詰められたイゾルデは、ヒステリックに叫び、ドレスの中に隠し持っていた護身用の短剣を抜き、逆上してセラフィナに襲いかかった。
「お前のせいで！お前さえいなければ、カイラン様は私のものだったのに！」
突然の凶行に、セラフィナは咄嗟に身を庇ったが、間に合わない。鋭い切っ先が、月光を浴びて煌めいた。

その時、彼女の耳元のピアスが、これまでで最も強い、まるで小さな太陽が生まれたかのような、眩いシャンパンカラーの光を爆発させた。

https://youtu.be/M2cckDmNLMI?si=Y7AgaonaG4fvKTAo

その光は、短剣を振り上げたイゾルデの心を、そして彼女の過去を、その場にいた全員の脳裏に鮮明なビジョンとして映し出した。

――幼い頃、政略の道具としてしか自分を見ない両親に愛されず、いつも一人だった少女の姿。初めて出席した夜会で、一人ぼっちで泣いていた彼女に、「大丈夫かい、お嬢さん」とハンカチを差し出してくれた、まだ少年だったカイランの優しい姿。その一瞬の優しさだけを心の支えにして、彼に認められたい一心で、必死に生きてきた彼女の孤独な魂の叫びが。

彼女は、生まれついての悪女なのではなかった。ただ、愛に飢え、愛され方を知らない、一人の哀れで弱い少女だったのだ。

光が収まった時、イゾルデは力なく短剣を床に落とし、その場に泣き崩れていた。衛兵たちが駆けつけ、彼女を取り押さえようとする。しかし、それを制したのはセラフィナだった。彼女はそっとイゾルデに歩み寄り、震えるその肩を、優しく抱きしめた。
「辛かったのね。ずっと、一人で戦ってきたのね。もう、大丈夫。もう、一人で頑張らなくていいのよ」

それは、かつて同じように孤独だった、本来のセラフィナの魂が言わせた言葉だったのかもしれない。その温かい言葉と抱擁に、イゾルデの心の固い氷が、ようやく音を立てて溶け始めた。

終章：時を超えた、令和のハッピーエンド

事件から数日後、カイランはセラフィナを自邸の薔薇園に呼び出した。夕暮れの優しい光が、咲き誇る花々をシャンパンのようにキラキラと染めている。

「セラフィナ」

カイランは、セラフィナの前に静かに跪き、彼女の白い手を取った。その仕草は、騎士が主に忠誠を誓うように、厳かで、真摯だった。

「私は、君に心から謝らねばならない。君という人間の本質を、その優しさも、強さも、何も見ようとしていなかった。私の愚かさを、許してほしい」
彼の青い瞳には、もう氷のような冷たさはなかった。そこにあるのは、深い愛情と、揺るぎない信頼の色。
「これは、もはや政略ではない。家のためでもない。私自身の、魂からの願いだ。どうか、私の妻になってほしい。私の隣で、ただ微笑んでくれるだけでいい。いや、違うな。私の隣で、共に笑い、共に悩み、共に未来を歩んでほしいんだ」

それは、美咲が元の世界で、心のどこかでずっと夢見ていたプロポーズの言葉だった。セラフィナの美しいアメジストの瞳から、大粒の涙が一筋、また一筋とこぼれ落ちた。それは、元の世界で流すことさえ忘れていた、温かくて、しょっぱくて、どうしようもなく幸せな涙だった。

「はい、喜んで。カイラン様。あなたのパートナーとして、ずっとそばにいます」

二人の結婚は、アステル王国に新しい時代の風を吹き込んだ。公爵夫人となったセラフィナは、「真実の光」の力と、斎藤美咲として生きてきた現代の知識を惜しみなく使い、夫であるカイランの改革を力強く支えた。

身分に関係なく誰もが学べる学校を設立し、前世の知識を活かして衛生環境を改善するための上下水道の整備を提案し、弱い立場の人々を救うための福祉制度を整えた。カイランは、そんな彼女を心から尊敬し、愛し、常に彼女の意見に耳を傾ける対等なパートナーとして、その隣に立ち続けた。

かつて「物言わぬ人形」と蔑まれた令嬢は、今や「慈愛の聖女」と呼ばれ、多くの民に心から慕われている。忠実な騎士リアムは、二人の幸せを誰よりも祝福し、生涯をかけて彼らを守り抜くことを誓った。罪を償ったイゾルデもまた、セラフィナの寛大な計らいで、新設された孤児院の運営を任された。彼女はそこで初めて、誰かに愛を与える喜びを知り、穏やかな笑顔を取り戻していった。

ある晴れた午後、セラフィナは夫の執務室を訪れた。書類の山に向かうカイランの真剣な横顔を、愛おしげに見つめながら、彼女はそっと耳元で輝くピアスに触れる。

（ねえ、美咲。聞こえる？私、今、すごく幸せよ。あなたが諦めかけた人生の続きは、こんなにも温かくて、輝いているわ）

心の中で、もう一人の自分、三十年間を懸命に生きた斎藤美咲に語りかける。すると、ピアスのシャンパンダイヤモンドが、キラリ、と優しく瞬いた。まるで、遥か時空を超えた南船場の片隅から、「よかったね」と彼女の幸せを祝福してくれているかのように。

異世界転生。それは、誰かの人生を奪うことではなかった。孤独だった二つの世界の二つの魂が、時を超えて手を取り合い、互いの痛みを癒し、新しい一つの輝かしい物語を紡いでいく、奇跡の始まり。

これは、婚約ピアスから始まった、令和の時代の新しいハッピーエンド。ただ王子様に選ばれ、守られるのを待つおとぎ話ではない。自らの知恵と勇気で運命を切り開き、最高のパートナーと共に輝かしい未来をその手で築き上げていく、強くしなやかな、現代の愛の物語である。