中江有里著、100分de名著 「北條民雄；『いのちの初夜』」です（NHK出版、2023年2月刊）。状態は、全般に良好です。送料は、クリックポストで185円です。

★内容：　『いのちの初夜』は、ハンセン病を患った青年・北條民雄（1914-1937）が、世間から隔絶された療養所生活の中で自らの絶望と向き合いながら、人間にとって「いのちとは何か」、「病とは何か」、「絶望の中で希望を見出せるのか」といったテーマを真摯に追求した名著である。書簡を通じて私淑した川端康成の支えもあり、芥川賞の候補にもなった。
　北條は18歳のときハンセン病に罹患し、東京東村山のハンセン病療養所「全生病院」への入所を余儀なくされる。ハンセン病は、現在では極めて伝染性の低い病であることがわかり治療法が確立されているが、当時の患者たちは誤解に基づく激しい差別と偏見に晒されていた。一度感染すると社会から完全に隔離され、後は死を待つしかない病とみなされた。北條は、そうした絶望的状況を見つめぬき、その果てに「苦しみや絶望の底にあってなお朽ちない、いのちの力」を見出す。それでもなお絶望を拭い去ることはできなかったが、かれは最期の最期まで生き抜こうという意志を、「書く」ことを通してつかみとっていった。

　この作品の主人公・尾田は、北條の分身ともいえる存在。　何度も「死のう」と思い自殺を試み続けるが、「いのち」がそれを拒む。やがて、書くという行為を通して懸命に生きようとする佐柄木という人物と出会うことによって、ぎりぎりの状況で「生きよう」という意志を取り戻していく。『いのちの初夜』は、極限状況を描いた作品ではあるが、苛烈な競争社会、分断と憎悪の連鎖から免れ得ない現代にあって、私たちがひとたび生きる希望を見失いかけたとき、再生への道筋を照らし出してくれる作品でもある。

　この作品を読んで衝撃を受け、大学で北條民雄について研究した俳優・作家の中江有里をナビゲーターとして、新しい視点から『いのちの初夜』を読み解いていく。「いのちの尊厳」、「いわれない差別や偏見がもたらすもの」、「死や病との向き合い方」など現代に通じるテーマについて考えながら、みずみずしくも巧みに練られた物語の中に、絶望的な状況の中で人はどのように再生していくことができるかを学んでいく。

★著者、中江有里は1973年、大阪生まれ。法政大学通信教育部文学部卒業。大学では北條民雄とその作品について研究した。1989年に芸能界デビューし、数多くのTVドラマ、映画に出演。歌手活動も行なう。2002年「納豆ウドン」で「BK ラジオドラマ脚本懸賞」最高賞を受賞し、脚本家デビュー。2006年に初の小説『結婚写真』を刊行。著書としてほかに『わたしの本棚』、『残りものには、過去がある』、『トランスファー』、『万葉と沙羅』などがある。文芸や読書に関する講師や、文化庁文化審議会委員、日本文藝家協会評議委員など複数の審議会等の委員、天理大学客員教授なども務めている。

※出品ページに表示の「配送方法」はあくまで単品でご落札いただいた場合の方法と送料でございます。複数点をご落札いただいた場合は、最も経済的な方法で一括発送いたします。具体的には、ヤフオクに「まとめて取引」という仕組みがあり、ご落札者による「まとめて取引」の要請に応じて、出品者より一括送料をお知らせし、その上で一括決済いただくという流れになります。